<三ツ峠での練習風景。霧が流れる屏風岩・第1バンド>
本稿は、岩登り「入門編」テキストです。初級〜中級については別稿「初〜中級編」テキストを、また、ロープ結束法(図)については「ロープ結束法」をご参照下さい。実技については、主にゲレンデでのクライミング入門を中心に記述してあります。実際のアルパインクライミングについては「初〜中級編」を参照して下さい。解説写真の一部は、別所宗郎氏、長岡和義氏、柴村浩氏にご協力頂きました。記して謝意を表します。
個人的使用の場合のコピーはご自由にどうぞ。その他の場合の無断転載は、しないで下さい。
©Tadahiko OHTSUKA 2005
When you follow any of the procedures described here, you assume responsibility for your own safety.
| 1 よく使うロープの結び方 | 7 岩登りの服装 |
| 2 クライミングの用具 | 8 ロープ結束の強度比較、ロープの耐久性 |
| 3 ハーネス装着とメインロープへの連結 | 9 カラビナの強度 |
| 4 岩登りの基本 | 10 岩場の呼称と形状 |
| 5 トップロープ | 11 ダブルロープ(補足) |
| 6 懸垂下降 | 12 参考文献 |
(1) エイトノット(figure eight follow through)・・・通し結び(ハーネスとロープの連結など)
(2) 〃 ( 〃 on a bight)・・・・・束ね結び(中間結び、懸垂ロープの末端処理など)
(3) クローブヒッチ(マスト結び)・・・メインロープからセルフビレイをとる時など(片手でもできるように)
(4) ダブルフィッシャーマン(漁師結び)・・・ロープシュリンゲを作る時など
(5) リングベンド(テープ結び)・・・・テープでシュリンゲを作る時など
(6) プルージック・・・・固定ロープへのシュリンゲ連結など(直径比で1/2以下でないと効きが悪い)
(7) ムンターヒッチ(イタリアンヒッチ、半マスト結び)・・確保器や下降器が無くなった場合の代用など
ノット(knot):結節(結び輪を作る) エイトノットなど。船速測定用の「節」も同源。
ベンド(bend):結合(つなぎ合わせる) リングベンドなど
ヒッチ(hitch):結着(からめる) ムンターヒッチなど。ヒッチハイクも同源。
ハーネスにはレッグループタイプとシットハーネスがあるが、岩登りにはレッグループタイプが適している。(欧米では、レッグループを持つハーネスを「シートハーネス」の名称で包括しているのでややこしい)
ソールの硬さの種類により、ハードタイプ、ミドルタイプ、ソフトタイプがある。初心者にはハードタイプかミドルタイプが登り易い。サイズは極端にきつくない物を。
通常、直径8mm以上でUIAA基準をクリアしたものをクライミングロープという。長さは45〜50mが主流。それ以外は(補助)ロープと呼ぶ。 (UIAA:国際山岳連盟、Union Internationale des Associations d’Alpinisme)。ロープはクライミングロープ、補助ロープにかかわらず、全て純正品を使用して下さい。
≪直径の相違による使用基準と強度≫
◎10mm以上・・・・シングルロープ仕様(シングルで使用) 末端に@などの表示 静的荷重換算7000kg程度
◎9mm・・・・・・ダブルロープ仕様(別々に2本使用) 末端に(1/2)などの表示 静的荷重換算6000kg
◎8mm・・・・・・ツインロープ仕様(2本一緒に束ねて使用)。末端に(∞)の表示 静的荷重換算5000kg。 簡単な雪稜、沢ではシングル使用も可
形状により、D型、変形D型、ベントゲート、ワイヤゲート、オーバルなどがある。また安全環付とそうでないものがある。アルパインクライミングでは変形D型、オーバル型、HMS型が一般的。アルパインクライミングでは、ベントゲート型はロープがゲートに乗って外れ易いので使わない方が安全。ゲートが開いた場合致命的になる箇所では必ず安全環付を使用すること。安全環にはオートロック式とスクリュー式がある。
シュリンゲにはロープ・シュリンゲとテープ・シュリンゲの2種類がある。強度、耐尖性ともテープの方が圧倒的に優れているので、最近はテープの方が主流である。テープは自作したものは結び目が弱く、かつ解け易いので初めから環状に縫ってあるソウン・テープをお奨めしたい。テープにしろロープにしろ結び目があると、結び目が無いものと比べて強度は半分程度に落ちることにご注意下さい。また、最近では細くてしなやかで強度が強いダイニーマ(スペクトラ)のソウン・テープが販売されています。同じ強度ならテープ巾の小さい物の方が扱い易いので、ダイニーマもオススメですが、これは摩擦力が少ないこと、衝撃吸収力が無いことにご注意下さい。
以下にシュリンゲの作り方を参考までに記述しておきますが、上記の理由から特に初心者にはソウンテープの使用を強く推奨します。
《強度比較(例)》
○テープ巾16mm(結び目無しで)・・・15KN(キロニュートン)、同(結ぶと)・・・7KN
○ソウンテープ巾16mm・・・22KN
○ダイニーマ巾 8mm・・ 22KN
○ロープφ6mm(結び目無しで)・・・8KN、同(結ぶと)・・・4KN
◎通常φ6mm以上の補助ロープ、幅2cmくらいのテープ(長さは1.5〜2mくらい)で作る。 色別に長さを変えて作っておくと便利。プルージックはφ4〜5mmが良く効く。
◎テープ、ロープそれぞれに用途があるので両方を持っておくと良い。
◎結び方 ロープ・・・ブルフィッシャーマン、 テープ・・・リングベンド
◎末端処理 ロープシュリンゲは直径の10倍以上出す。 テープはテープ幅の2倍以上。 いずれも結んでから、足で体重をかけてしっかりと締め上げておくこと。手で引っ張たくらいではダメ。
使用する前には、必ず結び目が緩んでいないかどうかをチェックすること。
◎テープシュリンゲには予め輪状に縫い付けてあるソウンスリングや、長さが自由に調節できるディージー チェーンなども市販されており、自分で結んだものより強度がある。初心者はこちらを使った方が確実。
◎細くてしなやかで強度が強いダイニーマ(スペクトラ)テープも発売されているが、摩擦力が少なく、また衝撃吸収力が無いことに注意。ダイニーマとナイロンのシュリンゲ同士の連結は不可(ダイニーマがナイロンを切断するから)。
一時的にセルフビレーをセットするためのシュリンゲ。補助ロープやテープでも自作できるが、長さが自由に調節できるデェージー・チェーンの一端をハーネスに連結し、他端に安全環付きカラビナを付けておけば便利。デェージー・チェーンのポケット(環)は強度が弱いので、衝撃加重が掛かる場合にはポケットを使用しないこと。
岩壁からの落石、その他の落下物から頭部を守り、また墜落したり、ロープに振られて頭を岩壁などにぶつけた場合にも頭部を保護してくれるので、必ず着用すること。クライミング専用のものを。
トップやセカンドを確保する時に使う小さな道具。ATCかルベルソが一般的(図―5)。ルベルソは下降器、フォロワーへの支点確保などにも使えるのでスグレモノである。また、登高器(アッセンダー)としても使用できる万能選手である。
エイト環またはルベルソが一般的。
◎ストッパー・・・一時的に身体をメインロープに固定したり、フィックス・ロープでの登高などに使用する(ロープマン、タイブロックなど)。
◎手袋(皮製、または綿製軍手)・・・確保や懸垂で使用。
◎チョーク・ボックス・・・ホールドが汗などで滑るのを防ぐ。

<図ー5 確保器、下降器、ストッパー>
(1)バックルは折り返して必ず二重に(最近は折り返し不要 なハーネスも発売されている)
(2) ロープはビレーループではなく、ウェストベルトとレッグループの両方に通して、エイトノットで結ぶ。エイトノットとハーネスの間はできるだけくっつけること(短く)。
(3) ロープ末端はフィッシャーマンで結び(又は8ノットの中に通す)、20cmくらい余らせておく。末端処理はいずれも摩擦力を持たせるためではなく、8ノットを締め上げておくためであるから、エイトノットに密着させて締めておくこと。
ハーネスの種類には簡単な雪稜や易しい沢登りで使用する簡易型(ボット・タイプ)もあるが、クライミン グでは本格的なレッグループタイプを使用すること。また、アルパイン用とフリー用の区別もあるので、本チャンを目指すならアルパイン仕様にすること。レッグループは太さが調節できる物の方がフィット感が高い。スワミベルトは身体を支える程度のものであり、クライミングには使えない。シュリンゲで作るダイアパースリングも同様。
(1)三点確保の厳守(動かすのは、一本だけ!!)。レスティング(休憩)時も同様。
(2) 岩から身体を離す(鉛直に立つ)。しがみつくと草臥れ、滑り、ホールドの位置や壁の上下方が見えない。
(3) ムーブ(手足の移動)は小さめに、スムーズに。無理をしない。安全第一で。
(4) 手で登るのではなく、足で立ち込むこと(その為にはフットホールド゙には爪先で立つこと。バランスの保持の為にも)。下図右端のように土踏まずなどで立つと滑る危険があると同時に、立ち込みができない。
| <鉛直に立った良い例> |
<へばりついた悪い例> |
<爪先立ちの良い例> |
<土踏まずで立った悪い例> |
(5)上半身はリラックスさせること。
(6) 常に上方や周囲を注視すること。(落石、人の落下、足元など)。
(7) ホールド(ハンドホールド、フットホールド※)。必ず支持力の確認をすること(抜ける場合あり)。ガバ、ピンチグリップ、オープンホールド、エッジホールド、クリング、ポケットホールド、アンダーホ―ルド、プッシュホールド、レイバック(図―8)。
※従来使われていた「スタンス」は現在は別の意味に使用され、「フットホールド」と呼ぶ。
(8) エッジング(ツマ先、インサイド、アウトサイド)、スメアリング(足裏全体で摩擦を効かす)。(図―9)。
(9) ハーケンやボルトの穴(リング)には絶対に指を入れないこと(墜落したら指が切断される)。どうしても握りたい場合はシュリンゲやヌンチャクを通して、これに掴まること。
(10) クライミングシューズの裏に泥などが付着していると滑るので、タオルなどで清拭しておくと良い。

<図−9 エッジング。左より爪先、インサイド、アウトサイド、スメアリング>
現在でこそ、岩登りの道具は多種多様な、軽量で強度も強いものが沢山出回っていますが、半世紀程前迄の道具は素朴なものでした。例えば、ザイルは重くて伸びない麻ザイル、カラビナも鉄製の重いものが一般的でした。今の様なシュリンゲやヌンチャクも無く、ザイルをカラビナに直掛けしていたと記憶しています。ハーネスや確保器や下降器もありませんでした。靴も重登山靴で登るのが普通でした。前穂高岳でナイロンザイル破断事故が発生したのが昭和31年(1956年)で、この遭難に想を得た井上靖の「氷壁」が出版されたのが昭和32年(1957年)でした。
トップロープとは練習者の安全を確保するために、クライミング終了点にセットした確保支点にロープをツルベ式に垂らし、一方のロープ端を練習者のハーネスに結束し、他端をビレーヤー(確保者)が確保する登り方。初心者に限らす、墜落の可能性があるルートでは多用する。
支点が確実で、かつビレーの失敗が無ければ練習者が墜落することはない。 これに対して、「リード」というのはリーダーがトップロープ無しでプロテクションをセットしながら登る方式。(図―9、10)。
(1) 確保者はトップロープの一端をエイトノットでハーネスに結束し、自分に近いメインロープからセルフビレーをセットする(クローブヒッチで)。クライマーが落ちると持ち上げられたり振られたりする場合が多い。確保器はATCまたはルベルソを使用する。登っている人が落ちたら(orテンションを要求したら)、直ちに制動側のロープをロックしてハーネスに座る様にぶら下がって止める。
(2)ビレーの位置はなるべく壁に近い場所で(離れていると、引かれた場合に壁に激突する危険がある)。
(3)確保者は手袋をつけること。(ロープと掌の摩擦による火傷防止。皮製が良。ナイロン軍手は溶融し不可)
(4)登る人はトップロープの他端をエイトノットで自分のハーネスに結束する。
(5)登り始める前に、お互いにロープ連結が正しくなされているかなどを相互にチェック。
(6)クライマー側のロープは登り始め(グラウンドフォール)以外は張り過ぎないこと。溜まるロープは整理。
(7)クライマーは、終了点に着いたら「ロワーダウン!」とコールし、ビレーヤーにテンションで降ろしてもらう。下記の懸垂の要領で降る。
(8)クライマーは地上に降りたら、尻をつく要領でロープを引く。(ロープの収縮力で上に持ち上げられるから)
(9)合図(合図は大きな声で、はっきりと。他のパーティーがいる場合には、混同を避ける為に相手の名前を付加すれば混乱しない)。
@ 『ビレーOKです』《ビレーヤー》
A 『登ります』《クライマー》
B 張力が欲しい時、落ちそうな時、休憩したい時は、『テンション!』《クライマー 》
C 下りる時は、『ロワーダウン!』《クライマー》
D 降りたって確保される必要がなくなったら(必要ならセルフビレーをセットした後に)『ビレー解除!』《クライマー》
E 『ご苦労様でした』《ビレーヤー》
(10)トップロープの支点は必ず2点以上のしっかりした支点からとる。できれば第3のバックアップをとっておくことが望ましい。シュリンゲに直接メ インロープを通すのではなく、シュリンゲに通したカラビナ2枚(ゲートの向きは交互に)に通すこと。シュリンゲに直接メインロープを通すと、摩擦 熱でシュリンゲやロープがたやすく溶融するから絶対にやってはいけない。支点は熟練者がセットしなければならない。支点が確実かどうかの チェックは例えばハンマーで頭を叩いて音で判断するなどの方法がある。
※確保技術はクライミングには欠かせない技術であるが、微妙な操作を要求される技術でもあるので、 生半可に行うと事故の元。これに習熟してから行うこと。自信が無い場合は確保を行ってはならない。

ATCを確保器に使った トップロープでの確保の要領の一例を図―11に示す。何方かの手が常に制動(確保)ロープを握っていることが肝心。 (写真では右利きの場合を示す。左利きの場合は手が逆になる)
一連の動作を素早く行うことが重要。

(1)ロープをATCに通す。確保側ロープは下の穴。 (2)確保ロープを引いて (3)腰の位置で止める
(4)左手を右手の上に移動し確保ロープをロック (5)右手を左手の上に移動しロック (6)左手をクライマー側ロープに戻す。
<図−11 トップロープの確保の要領>
懸垂下降とは、懸垂下降用のロープに連結された下降器のブレ−キングを利用しながら、ロープにぶら下がって降る方法である。アルパインでの登頂後の下降、稜線でのコルへの下降など多用される技術である。足が壁につかないような垂壁やオーバーハングでは「空中」懸垂となる。
(1)懸垂下降をする場所に登り着いたら、まずセルフビレーをセットする。セルフビレーは
ハーネスに連結したディージーチェーンなどでセットするのが便利。
(2)懸垂下降の支点も、トップロープの支点と同様に2点以上のしっかりした支点からとる。懸
垂ロープはシュリンゲに直接通してよい。懸垂ロープの支点へのセッティングは熟練者
が行うこと。折り返したした懸垂ロープの末端はエイトノット(束結び)で結んでおくこと。
(3)下降器は原則として8環又はルベルソを使う。ATCは使わない(大きな摩擦熱が出る為な
ど)。下降器を落とさないように気を付けること(8環を落とさないセット方法を図―12に示
す)。
(4)バックアップ゚として、シュリンゲ゙をフリクション・ノットで懸垂ロープ゚に結束し、他端をハー
ネスに結んでおくと安全性が高まる。下降器の上部の懸垂ロープにオートブロックを巻き
つけ、これを別なシュリンゲでハーネスのビレーループに連結する。懸垂中は、制動側ロ
ープを握っている手の反対の手でオートブロックを握って滑らせる。万が一制動が不安
になった場合や、途中で止まる必要が生じた場合には、オートブロックから手を離せばフ
リクションが掛かって停止できる。また、下降器の下部の懸垂ロープにオートブロックを作
り、これを制動手側のレッグループに掛けたカラビナに連結する方法もある。この方法は
、制動手を離せばすぐにフリクションが掛かって停止でき、再びオートブロックを軽く握れ
ば下降を開始できるという利点がある。(オートブロックは細いテープで作ること。結び方
は、技術テキスト別稿「ロープ結束法」参照)。
※従来は懸垂下降のバックアップはプルージックが使われていたが、プルージックは一旦
加重が掛かれば解除が容易でないことから、最近は使われなくなっている。加重が掛
かったプルージックが締まってしまって解除できず、ナイフでプルージック・シュリンゲを
切断せざるを得なくなった話をよく聞く。
(5)セルフビレーをつけたままで、下降器のセットが正しいか、懸垂支点が確実かどうか体重
を掛けてみて確 認した後(図―13)、セルフビレーを外して下降する。下降の姿勢は、ハー
ネスに座った感じでややのけぞり、足は軽く壁を突く感じでスムースに降りる(図―14)。
上 下、横、足場 を確認しながら降りること。また、できるだけ鉛直方向に降りる。斜め
方向に降りると身体が振られて壁にぶつかって怪我をする危険がある。
(6)制動側の手は利き手で。手の位置は腰の横。もう一方の手はロープから離して良いが、
不安なら軽くロープに沿わせておいても良い。
(7)支点に衝撃を与えないためにスムーズに下りること。飛んだり撥ねたりしないこと。
(8)絶対に制動手をロープから放さないこと。(⇒墜落死!! ※)。
(9)降り着いたら、腰を落として座り込むようにしてロープを引き、必要ならセルフビレーをセ
ットした後、ロープを解除する。(ロープを引くのは、ロープの収縮によって身体が持ち上げ
られるのを防ぐため)
(10)首や肩からタオル、シュリンゲなどのややこしい物はぶら下げないこと。これらが確保器
(8環)に巻き込まれると外せなくなり、重大な事故に繋がる。首に巻いたタオルの端が巻き
込まれて窒息死した例がある。 また、長髪も同様であるから、巻き込まれないように束ね
ておくこと。
※下にいる人がロープの末端を引いてやれば、ロープと確保器に摩擦が掛かって下降者が
制動手を離しても停止できるので、初心者が懸垂下降する場合には、下で別の人がロー
プ末端を持って監視しておくとよい。

(1)大環をカラビナに通しておく (2)そのまま懸垂ロープを8環に通し (3)小環をハーネスのカラビナに掛ける


(4) ギアラックから8環を外す (5)セットを確認 (6)懸垂ロープの弛みを無くす
<図−12 8環を落とさないセット方法>

<図−13 下降の前に安全確認> <図−14 懸垂姿勢> <8環の通し方>
お恥ずかしい話ですが、かって、先を急いでいた時、懸垂ロープの8環をハーネスのビレーループに掛けた積りが、何を間違ったのかギアラックに掛けてしまい、肝を冷やしたことがありました。懸垂の姿勢に入って8環の位置がおかしいのに気づき、またセルフビレーも未だ外していない時点であったので事なきを得ましたが、今想い出しても背筋がゾーっとします。特に、アウターなどを沢山着こんでいる冬山では、ハーネスのウェストベルトなどが見えないので注意が肝心です。また、操作は手や身体に覚えこませておくことが大切です。間違った操作をすれば身体が警告を発してくれますから。
上記のような誤りを起こさないためには、エイト環は使わず、ハーネスのビレーループに確保で使うルベルソを常に下げておき、確保にも懸垂下降にもルベルソを使用するようにすれば防げます。この方がセット時間も早い。
(1)ギア類はすぐ取り出せるよう に整理しておく。シュリンゲをぶら下げる時は短く。ギアラックが便利。
(2) ズボンの裾やシャツの袖はヒラヒラしないものを。首や腰からタオル等ややこしいものはぶら下げないこと。身なりはスッキリと!! シュリンゲや ディージーチェーンなどを肩掛けにする場合はザックの上から。
(3)長髪などは束ねて頭の上でまるめておくこと。懸垂下降中に長髪や首に巻いていたタオルがエイト環に巻き込まれて首を締 められ、死亡事故となったケースがある。
◎結び目無し・・・・100%として
◎8ノット・・・・・70%程度
◎ブーリン・・・・・55% 〃(リング荷重が掛かる場合は、抜ける可能性大。使ってはならない)
◎ダブルフィッシャーマン・・・65% 〃
◎リングベンド・・・60% 〃
◎プルージック・・・40% 〃
■ ロープ/ハーネスの耐久性
≪大敵≫・・・紫外線、化学物質(酸、アルカリ)、泥。(携行時は袋に収納する。乾燥は陰干しで)
≪耐用年数≫ 製造から4〜5年(全く使わなくても)。購入時には製造年月日に注意して下さい。
横方向加重、ゲートが外れた状態では強度無し!!
カラビナは正しく使っている状態(縦方向荷重でゲートが閉じている状態)では、静荷重換算で2,200kg程度の強度がある。しかし、横方向荷重やゲートが開いた状態になると、これが500kg程度に激減する。
500kgの強度と言えば、ほんのちょっとした滑落でもすぐこの値を越える程度のものでしかない。 従って、横方向に力が掛かるようなセットは厳禁。また、ゲートが外れた場合には致命的事故になるような場合には、必ず安全環付カラビナを使用すること。カラビナには以下のような刻印が打ってある。
(イ):ゲートが閉じた縦方向の強度(22KN以上を使用のこと)
(ロ):横方向の強度、(ハ):ゲートが開いた場合の強度
(KN=力の単位キロ・ニュートン。1KN≒静荷重換算で約100Kg相当の力)
【フェイス】傾斜の強い平らな壁
【スラブ】フェイスよりやや傾斜が緩い壁(一般的にホールドに乏しい)
【クラック】割れ目(指が入らない細さをリス、身体が入るか入らない程度のものをオフウィドゥス、身体が入る太いものをチムニーと呼ぶ)
【フレーク】クラックの一種だが、剥がれそうな形に切れ込んだもの
【凹角】ディエードル、コーナーとも呼ぶ
【オーバーハング】90度以上の壁。庇状はルーフと呼ぶ
【カンテ】出っ張った岩角が縦方向に続いている稜
【テラス】数人が立てる広さの岩棚。一人くらいしか立てないものはレッジと呼ぶ。横につながったものがバンド。
【ピナクル】大きな岩の突起。頑丈なものは良い支点となる。
【リッジ】(小)岩稜
登攀の難易度を表す指標。ピッチ毎のグレードを表すピッチグレードとルート全体(マルチピッチ)を表すルートグレードの2種類がある。ガイドブックなどに記載されている。いずれも数字が大きくなるほど難易度が高い。
グレードの評価には主観的要素も多く、また岩場の経年変化などによっても変化するので、「絶対的」な尺度ではないことに注意。
◎ピッチグレード
フリークライミング・・・UIAAシステム:T〜Y+ ヨセミテデシマル:5.7、5.10a、5.11d等と表示
人工登攀・・・A0〜A3などと表示 (例えばA0はプロテクションをホールドにして登れるピッチを示す)
“A”はAid climbingの略
◎ルートグレード 1〜6級で表示(日本)
≪グレードの例≫
@入門ルートとしてポピュラーな前穂・北尾根(夏期):1級(ピッチ最高グレードV)
A剣岳・八ツ峰Y峰Cフェース剣稜会ルート(夏季):2級(ピッチ最高グレードV)
B有名な谷川岳一の倉沢衝立岩中央稜(夏期):3級上(ピッチ最高グレードXマイナス)
(注意)表記グレードが同じであっても、ゲレンデと本チャン・ルートでは体感難易度が異なる。一般的に本チャ ン・ルート(アルパイン)ではアプローチもルートも長く(マルチピッチ)、高度感もあり、また気象条件
も厳しいので、より困難であるが、それだけに登攀も楽しく興味深いものとなり、満足感も大きい。アル パインでは岩を攀じる技術もさることながら、登山そのものの経験、知識・技術、持久力が重要になる。
ここでは述べなかったが実際の本チャンルートのリードでは、ダブル・ロ ープで登ることが多い。この理由は以下のとおりである。
(1) 本チャンのルートでは支点が散らばっているために、シングルロープではロープラインが屈曲してロープが流れにくいこと、また墜落した時に振られること、屈曲が激しい場合にはロープが破断する危険性
があること。ダブルロープにすればラインが真っ直ぐにできること。
(2) 万が一、1本のロープが破断しても他の1本で滑落を停止できること。
(3) 3人パーティーの場合には、セカンドが同時に2人で登ることができること(厳密に言えば、このような場合にはφ10ミリ以上を使うこと)。 ダブルロープとは下図に示したアンザイレンの方法であり、通常φ9ミリ
のロープ2本を別々に使う。束ねて使うのではない。(2本を束ねて使う方法はツインロープと呼び通常φ8ミリのロープを束ねて使う)。

(ダブル・ロープ)
(1) 『最新クライミング技術』菊地敏之著、東京新聞出版局、1,600円
(2) 『全図解クライミングテクニック』堤信夫著、山渓、1,400円
(3) 『アルパインクライミング』保科雅則著、山渓、1,456円

以上